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福岡高等裁判所 昭和27年(く)7号 決定 1952年2月19日

本籍 佐賀県○○郡○○村大字○○○○番地

住居 福岡市○○町○丁目○○番地 ○○店員

現在、福岡市老司、福岡少年院在院中

抗告人 A

昭和七年一月十二日生

右の者に対する窃盗保護事件について、昭和二十七年一月十二日福岡家庭裁判所のした保護処分の決定に対し、抗告人から抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨は、福岡家庭裁判所は、昭和二十七年一月十二日抗告人に対して、抗告人を医療少年院に送致する旨の決定をしたが、それは、同日審判の際、同裁判所は、身元引受人があれば、釈放するといい、抗告人の母親は、抗告人が出所後、九大精神病院に、ヒロポン中毒治療のために入院を承諾すれば、その身元を引受けるとのことであつたが、抗告人が、曲解して、同病院に入院することを承諾しなかつたので、母親が身元を引受けなかつたことに基因する。しかし抗告人は後刻、その非を悟つて、現在では、九大の右病院に入院して、ヒロポン中毒を完全に加療する決心であるから、原決定を取り消し、更に相当の裁判を求めるために本件抗告に及ぶというのである。

しかし、原審審判調書の記載によると、抗告人の母親は、抗告人を持て余し、保護に困惑し切つて、保護意思を全く失つているし、伯母も抗告人の無軌道的な生活態度に施すべき術さえ知らない状態であることが認められ、抗告人主張の如き事実は毫も認めることができない。そして本件記録並びに原家庭裁判所で調査した事項等を綜合すると、抗告人は、新制高校二年を中退した十六歳頃からヒロポン注射を始め、その中毒による興奮性異常に基ずく感情昂化のため常軌を逸脱する反抗的行状はげしく、ヒステリー性を帯びた興奮性性格の持主で、精神病質の疑があるばかりでなく、記録によつて窺い得る抗告人の生育概史、経歴、資質、並びに生活環境上の特性等諸般の事情を慎重に考慮すると、抗告人の病的資質の欠陥障碍を治療教育する処置として、抗告人を医療少年院に収容し、その収容過程において、医療的環境のふん囲気内で、反社会性に対し、周刻適切な規律ある権威面の治療教育を加うべき必要のあることが認められる。

してみれば、福岡家庭裁判所が、これを同趣旨に出て、抗告人を医療少年院に送致する旨の決定をしたのは、まことに相当であつてもとより、その処分が著しく不当ということはできないし、又職権で調べても原決定には、その決定に影響を及ぼす法令の違反並びに重大なる事実の誤認があることは、毫も認められない。

以上、いずれの点からみても、本件抗告はその理由がないので、少年法第三十三条第一項に従い、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 大曲壮次郎)

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